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BCPマニュアルとは?必要な理由や策定手順・テンプレートを紹介

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日本では、大規模な震災や大型台風といった自然災害が毎年のように発生しています。その被害は人の生活だけでなく、企業にも多大な影響を及ぼします。例えば東日本大震災では、震災発生から10年間で累計2061件もの企業が直接的または間接的な被害で倒産しました。
災害による企業への被害を最小限に留め、いち早く事業を回復させるためにはBCP(事業継続計画)という考え方が重要です。この記事では、BCPとは何かを解説した上で、BCPマニュアルを策定する方法やポイントを解説します。

01BCP(事業継続計画)とは

BCPとは「Business Continuity Plan」の略で、日本語では「事業継続計画」と訳されます。緊急事態が発生しても損害を最小限に抑え、事業を継続もしくは早期復旧するために必要な計画・対策のことです。
BCPで想定される緊急事態とは、地震や台風のような自然災害だけではありません。事故やパンデミック、テロ、サイバー攻撃、社内の不祥事、重要な取引先の倒産など、事業の存続を危ぶめる全てのことが対象です。

02企業がBCPマニュアルを作成すべき理由

緊急事態が発生したときに計画やマニュアルが何も整備されていなければ、企業はたちまち事業継続ができない状況に陥るでしょう。業績悪化や従業員の解雇、最悪の場合そのまま倒産してしまうかもしれません。このような事態を防ぐために、BCPが必要です。
突然の災害時に何も対策がない状態では的確な行動をとるのは難しいでしょう。対応が遅れて社内が混乱に陥る、という状況は十分に考えられます。そのような事態に備えてマニュアルを作っておけば、混乱を防ぎ、冷静に考え適切な対応をとりやすくなります。同時に、会社の損害を最小限に抑え、事業の継続・復旧を早期にできれば、株主や市場、顧客からの信頼へもつながります。

03BCPマニュアルと災害対策マニュアルの違い

BCPマニュアルと似た考え方として「災害対策マニュアル」を活用した防災計画がありますが、両者は似て非なるものです。
災害対策マニュアルは自然災害や震災の直接的な被害に焦点を当てたマニュアルです。例えばビルの倒壊時に従業員の安全確保の方法や備蓄品の対応手順など、行動手順を示すために作成されます。
対して、BCPマニュアルは間接的な被害を含めて、事業や業務を早期に復旧させるために作成されます。間接的な被害というのは物資不足やライフラインの停止、取引先との連携不能など自社の事業を脅かす全てのことを指します。間接的な被害を想定しているか否かが両者の大きな違いです。

04BCPマニュアルの策定手順

BCPマニュアルの策定にはさまざまな手順がありますが、ここでは9つのステップからBCPマニュアルを作成する方法をご案内します。これからBCPマニュアルを作成しようと考えている方や、今まで策定してきたBCPマニュアルに漏れがないか気になる方はぜひ参考にしてみてください。
 

1.想定されるリスクを書き出す

 
まずは、非常時においてどのようなリスクが考えられるかを全て洗い出しましょう。
企業のリスクには自然災害や事故、ヒューマンエラー、情報セキュリティリスク、法務リスク、人事・労務リスク、労働安全衛生リスクなどがあります。
ここで重要なのは大まかにではなく具体化して考えることです。例えば自然災害であれば台風や地震というように、実際どのような災害において事業継続が脅かされるかを考える必要があります。他にもパンデミック、情報漏洩のように具体的にBCPマニュアルが必要とされるリスクを確認しましょう。
 

2.リスクの高さから想定する緊急事態を定める

 
リスクを洗い出したら、想定されるリスクの中で、現時点で想定対象とするものを決定します。
考えられるリスクは膨大にありますが、それら全てへ対処を考えるのは現実的ではありません。そのため、リスクに優先順位をつけて優先順位の高いリスクに絞ってBCPを策定しましょう。
優先順位をつけるポイントは「可能性」「頻度」「重要度」です。どれくらい発生する可能性があり、どのくらいの頻度で起こり、どれほど損失が出るのかという点で判断することが大切です。例えば、同じ地震のリスクでも活断層に近いのであれば揺れによる被害を、海に近いのであれば津波による被害を優先して想定しておくべきでしょう。
 

3.BCPを発動させる基準の明確化

 
次に、どのような場合にBCPを発動させるのか、基準を明確に決めておきましょう。
BCPマニュアルが整っていても、非常時に「BCPが発動されたのか分からない」ようでは、BCPは効果を発揮しません。基準が決まっていなければ、従業員がどうすべきかわからず、BCPマニュアルをうまく活用せず各自の判断で行動してしまうかもしれないからです。
例えば、地震におけるBCP発動条件を定める場合は、事業所の震度が5強以上というように決めます。この時、従業員の誰でも判断できるような指標にすると良いでしょう。どんな条件に当てはまればBCPを発動するのか明確にしておけば、より早く従業員が「今はBCPマニュアルをもとに行動すべきだ」と意識して行動できます。
 

4.優先的に復旧すべき事業を絞る

 
事業継続にあたり、どの事業を優先的に復旧させるかも事前に決めておく必要があります。
多角的に事業を広げている企業であるほど、全ての事業を同時並行で復旧させるのは不可能です。会社の存続に最重要な中核事業を優先できるよう、BCPマニュアルであらかじめ定めておきましょう。
中核事業は収益の多さや他社との関係、社会的重要性などから絞り込みます。優先順位をつけておけば、被災後の混乱下でも、効率良く迅速に復旧可能です。
 

5.RTO・RLOを設定する

 
優先して復旧させる業務を選定したら、どのくらいの時間で、どの程度まで復旧させるかも決めます。具体的には、以下の2つの指標に基づいて決定します。
———————————————————————————-
● RTO:目標復旧時間
中断した業務やシステムをいつまでに復旧させるか、目標となる期限を決めます。システム停止やサービス中断が許される時間とも言えます。
● RLO:目標復旧レベル
中断した業務をどのレベルまで復旧させるかという指標です。普段の業務を100%とし、何%まで復旧させるか決めます。
———————————————————————————-
例えばRTOが1日、RLOが30%であれば、1日以内に30%のサービスを提供できるよう復旧させるという意味です。RTOの単位は時間ですが、RLOの単位は品質レベルや処理能力レベルなど事業によって異なります。RLOの水準が低くなっているほど、事業の復旧は早くなります。
 

6.フェーズごとの具体的な行動を決める

 
事業を元通りに再開できるまでの各フェーズの行動を、具体的に細かく決めましょう。ここでは「初期対応フェーズ」「業務仮再開フェーズ」「本格復旧フェーズ」という段階に分けて事業の復旧を図るとしています。

初期対応フェーズ

緊急事態発生から24時間~2、3週間の段階では、どのような被害があるか現状を把握するのが重要です。
具体的には周囲の安全確保や従業員の安否確認、緊急連絡、二次被害の防止、業務を継続する環境の確保などが挙げられます。

業務仮再開フェーズ

業務を再開するにあたって準備を整える段階です。
例えば担当者以外へ移行したり、不足設備や店舗・工場などを代替したりと、人や設備に代わりがある状態を作っていきます。合わせて、マニュアルには代替手段を示しておきましょう。

本格復旧フェーズ

緊急事態発生から2~3週間後以降は、平常業務へ本格復旧する仕組みを整えます。具体的には、以下の復旧を検討しましょう。
● 物理的な復旧:会社施設や設備など
● 技術的な復旧:ネットワークなど
それぞれの復旧を行うことで、徐々に本来の業務へと戻します。
 

7.責任者や代行者を明確にする

 
非常時においては、少なからず現場の混乱を招き、思い通りの行動ができない可能性があります。責任者・代行者を明確にしておくことで、明確な方針を示すことが重要です。
基本的に企業のトップが責任者を務めますが、責任者が指示を出せない場合を想定して、代行者を決めておくのも重要です。
 

8.従業員の具体的な行動指針を決めておく

 
緊急事態における従業員が取るべき行動を具体的に細かく決めておきましょう。
例えば確認すべき項目を決めておいたり、優先すべき重要業務や具体的な行動を簡潔に明示しておいたりすれば、緊急時でもマニュアル通りに動けるため、焦らず冷静に対応できます。従業員は状況に応じて、事務所に待機する、避難する、自宅に帰る、といった行動をとる可能性があります。非常時に起こる事態を想定して、ケースに応じた行動を規定しておきましょう。
 

9.BCPの定期チェックリストを作成

 
BCPマニュアルを策定した後は、定期的にメンテナンスを行うことが大切です。時間が経てば環境や事業などは変化するので、BCPマニュアルも変化に対応できなければ意味がありません。マニュアルと現在の社内体制が合っているか、定期的に確認するチェックリストを作成しましょう。
中小企業庁では「BCP取組状況チェック」を公表しており、質問に「はい」と答えた個数でBCPの有効性を判断できるようになっています。こうしたリストを有効活用しましょう。

05BCPマニュアル作りに役立つテンプレート

ここまでBCPマニュアルの策定方法をご案内しました。しかし、何もない状態からBCPマニュアルを作るのは非常に難しいことでしょう。そこでBCPマニュアルの作成に、役立つテンプレートを紹介します。
 

中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」

 
中小企業庁ではBCP策定を推進する特設ページとして「中小企業BCP策定運用指針」を開設しており、テンプレートが公開されています。
BCP策定に費やせる時間と労力に応じて、以下4パターンが用意されています。

入門コース:1~2時間程度

基本コース:1~2日程度

中級コース:3~5日

上級コース:1週間程度

セルフチェック表や各種雛形、用語解説、財務診断、サンプルイメージ、Q&A、事例集などコンテンツが充実しており、初心者でも作成できるよう細かく配慮されているのがポイントです。初めに自社の取り組み状況を分析する「BCP取組状況チェック」を行い、現状分析と知識を確認してから、テンプレートを埋めて作成していきます。中小企業の特性や事情を考慮したアドバイスや、具体的な事例など、中小企業にマッチするよう工夫されています。
(※参考:中小企業庁 中小企業BCP策定運用指針
 

事業継続推進機構「中小企業BCPステップアップガイド」

 
事業継続対策の推進を目的に設立された特定非営利活動法人「事業継続推進機構」が公表しているテンプレートです。
「中小企業BCPステップアップガイド」は、以下のような3部構成です。

第1部:防災計画と防災対策などBCP策定の基礎固め

第2部:重要業務を認識して計画書の骨組みを作成

第3部:本格的なBCPの計画書を作り込んでいく

テンプレートは記入項目ごとに策定方法や留意事項など、ガイドラインが詳しく記載されており、記入例もあるため、必要な情報を書き込んでいくだけでBCPが完成します。
また、BCPの完成度を確認するためのチェックリストが用意されているため、十分に作成できているか客観的に判断可能です。BCP関連の勉強会やセミナーなどもあり、疑問点を解決しやすくなっています。
(※参考:特定非営利活動法人 事業継続推進機構 中小企業BCPステップアップガイド
 

東京商工会議所「BCP策定ガイド」

 
東京商工会議所は「BCP策定ガイド」として、以下3つの資料を公開しています。

BCP策定ガイド(本編):BCPの重要性を事例とともに解説

BCP策定ガイド(様式):テンプレート

BCP策定普及・啓発パンフレット:BCPの考え方・BCP策定の重要ポイントを紹介

策定ガイド本編の冒頭にチェックシートがあり、事業の概要を再確認したうえで、テンプレートを埋めながら策定できます。
テンプレートは「概要」「戦略」「個別計画手順」「追加個別計画手順」の4つに分かれており、BCPの方針や目的、事業の優先順位、RTOを決め、フォーマットに落とし込んでいけば、段階的に作成できます。
このテンプレートはカラー図表やフローチャートが用いられるなど、読みやすく・わかりやすくなっているのが特徴です。
(※参考:東京商工会議所版BCP策定ガイド

06BCPマニュアルを活かすためのポイント

BCPマニュアルは完成した後が重要です。いざという時に役立つものにするためには、訓練と更新が必要不可欠です。ここでは、BCPマニュアルを活かすためのポイントを、2つ紹介します。
 

全従業員にBCPの教育・訓練を施す

 
BCPマニュアルは全従業員に教育・訓練を施して、浸透させることが重要です。
せっかくBCPを策定しても従業員に周知されていなければ、いざという時にスムーズな対応はできません。全従業員に教育や訓練を施しておけば、万が一の際でも従業員は冷静に対処できます。マニュアルを周知化し、起こり得る状況を想定して訓練しましょう。また、もし訓練がマニュアル通りにいかなければ、マニュアル自体をあらためる必要があります。
 

BCPは常に最新の情報へ更新する

 
BCPマニュアルは常に情報をアップデートするのが重要です。
主軸にする事業や自社を取り巻く状況、世の中の動きなどが変われば、想定されるリスクや中核事業も変化するでしょう。BCPマニュアルはその変化に対応できなければ意味がありません。定期的に見直し、更新しましょう。

07BCPマニュアルは策定後の見直しが重要

BCPは災害や事故などが起きた場合に、少しでも早く事業を再開するために必要な考え方です。従業員や事業を守るだけではなく、ステークホルダーからの信頼にもつながります。マニュアルを作っておけば、災害時の混乱状況でも、冷静に的確な行動が取れるでしょう。
ただしBCPマニュアルは一度作れば完成ではありません。現状に合っているか見直すことが大切で、常にアップデートし続けることが重要です。社内にBCPがない場合はテンプレートを参考に、災害や事故に負けない企業作りをしてみてはいかがでしょう。

監修者情報:株式会社パスカル 
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